働き方改革関連法の施行にともない、残業時間の上限が厳しく制限されることになる。
大企業は2019年4月からだが、中小企業は翌2020年4月からスタートとなる(※3)。残業時間についてはこれまでも法律で「原則」月45時間、年360時間と定められていた(旧労働基準法第36条)が、上限を超えたとしても行政指導があるだけで、法的な拘束力はなかった。さらに特別条項付きの労働基準法第36条に基づく労使協定(36協定)を結ぶことにより、上限を超えても残業が可能な仕組みになっていた。
今回の法改正では、この残業時間に上限が設定されることで、36協定を締結したとしても残業時間に上限を設けることとなり、違反すると事業主(事業の経営責任者)は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が課せられることになる(改正労働基準法第10条および第109条)。
長時間労働による自殺問題が社会で注目を集めたことをきっかけに、残業時間の管理を経営者に求める声が高まっている。かつては長時間労働、サービス残業が美徳とされる時代もあったが、昨今は労働環境の見直し機運が高まり、政府も長時間労働の是正を強く訴えるようになった。
しかし、多くの中小企業ではこれまでも慣習として、残業を当然のこととして導入している企業が多いだろう。それでも今後は残業時間に対する意識を高めていかなければならない。その傾向は今後もさらに強くなっていくと予想される。
※3:厚生労働省の中小企業の定義は、(1)資本金の額または出資金の総額が、小売業・サービス業は5,000 万円以下、卸売業は1億円以下、それ以外は3億円以下であること。または、(2)常時使用する労働者数が、小売業は50人以下、サービス業・卸売業は100人以下、それ以外は300人以下であること。なお、個人事業主や医療法人など、資本金や出資金の概念がない場合は、労働者数のみで判断することになる。
「働き方改革関連法の主な内容と施行時期」(厚生労働省京都労働局)
https://jsite.mhlw.go.jp/kyoto-roudoukyoku/content/contents/000271655.pdf
フォーバルでは中小企業の経営者に対し、残業に関する意識を問うアンケートを実施した。
最も多かったのは「残業が少ない人は、時間効率が良い人だと思う」の819 社(1188 社中・68.9%)で、他の選択肢を圧倒した。次いで多かったのが「残業が多い人は、頑張っている人だと思う」の210社(同・17.7%)。この結果を見ると、残業が多いことが必ずしも頑張っているとの評価につながっているとはいえず、経営者の多くは、残業が少なければ「時間効率が良い」と考えていることがわかる。
一方、「残業が多い人は、残業代でお金を稼ぎたい人だ」(10.3%)、「残業が少ない人は、暇な人だ」(3.1%)にも回答した企業がみられた。
さらに従業員の労働時間管理については、経営者に対して厳しい管理が求められることを「ある程度気にしている」と考えている企業が最多の596 社(1188 社中・50.2%)となり、「かなり大切だと思う」と合わせると73.5% にのぼった。経営者の多くが、従業員の労働時間管理について気にしている状況が伺える。
ただ、「かなり大切だと思う」と、その管理の必要性について評価する姿勢を示す経営者は277社(同・23.3%)にとどまっている。
労働時間の上限規制の導入にあたり、企業がまず行うべきことは「労働時間の適正な把握」である。労働時間の管理を行うためには、正確な時間の把握がなければ始まらない。「適正に記録」する仕組みを各企業とも積極的に導入し、把握に努めなければならない。
ブルーレポートの発行者
株式会社フォーバル ブルーレポート制作チーム
フォーバルは1980年に創業以来、一貫して中小企業と向かい合い、現在20,000社以上にサービスを提供している。フォーバル創業者の大久保秀夫は東京商工会議所副会頭、中小企業委員会委員長としても活動。今後フォーバルが誰よりも中小企業のことを知っている存在を目指し、良いことも悪いことも含め、現場で中小企業の生の声を集め、実態を把握。そのうえで関係各所へ提言することを目的に、プロジェクトを発足。