人手不足状況への政府の見解や対策の現状
日本におけるM&A の歴史について考えたいと思います。
M&A はMergers & Acquisitions の略で、直訳すると買収&合併となります。
最近でこそ新聞に掲載されない日はないというくらいに一般的な言葉になってきましたが、2,30年前までは身売り、乗っ取りというマイナスイメージがとても大きいものでした。日本においては遡ること1900年代初め、三井、三菱といったのちに財閥となっていく企業集団が、官業払い下げを含めた多くの事業買収を通して事業基盤を構築し工業化を推し進めました。
これらは必ずしも友好的なものばかりでなく、敵対的な買収も多かったようです。
その後バブル景気に入る1985年頃から1990年頃、国内企業が海外の企業を買収する件数が5年で10倍になりました。ソニーのコロンビアピクチャーズ、三菱地所のロックフェラーセンター買収が記憶にある方も多いのではないでしょうか。
現在は、バブル期のような一過性のものではなく、経営になくてはならないものとしてM&Aが一般的な手法となってきました。実際に1985年に公開されているM&A 件数が250件程度に対し、2017年は3,000件を超える件数が実行されるまでになっています。
また、特に増加しているのが中小・小規模企業の事業承継型M&Aです。一世代前は事業を運営している家に生まれたら家業を継ぐことが当たり前でしたが、時代の流れとともに価値観の多様化、少子化、目まぐるしく変化する外部環境などにより子どもが継がないケースが急増していることが要因です。
長年やってきた商売で社員もお客様もいるので何とか会社を残したいし、辞めるわけにはいかないが後継ぎがいなくて困っているという経営者の方のお悩みの相談がフォーバルにも急増しており、その解決策として企業規模問わず、友好的M&Aが救世主として活用されています。
2017年公開されたM&A は3,000件を超えています(図2−1参照)が、中小・小規模企業など公開されないご縁も含めるとおそらく10,000件は超えていると考えています。1 日約3件が日本のどこかでM&Aを実行している計算になります。このようにM&A は敵対的なものから友好的なものへ、大企業だけから全ての企業へと用途が広がっています。
一方で、中小企業経営者の中には、M&Aに対するイメージが悪い方もまだまだ多いようです。
M&A よくある誤解
1.M&Aって会社乗っ取りのこと?
→ M&Aという言葉が一般的になったのは2005年前後といわれており、ホリエモン事件やドラマのハゲタカが流行ったことが一因なのか、M&A=乗っ取りのイメージが定着してしまいました。
ですが、日本の中小企業は上場会社と違って株を買いたいときに買うことができない(株式譲渡制限あり)規定がある場合がほとんどです。オーナーが株を売ることを了承した相手にしかM&Aができないため、原則有効的なM&Aしか存在しません。
2.譲渡する会社は経営が厳しい会社?
→『身売り』という言葉から連想される誤った考え方です。
確かに、「会社の経営が厳しいので辞めてしまいたい」という経営者が多数いらっしゃるのは事実ですが、経営が厳しい会社は譲受先からみても厳しく見えるため、譲渡は容易ではありません。
譲渡が成立している会社の特徴は、商売は順調で、地域にとって残すべき会社である一方で、経営を引き継げる人がいない、今はいいけど5年後を考えると先行きが不安だという会社です。
責任感が強い経営者であればあるほど会社の存続を一番に考えて、元気なうちに譲渡のための一歩を踏み出されます。
3.従業員はリストラされるの?
→リストラされることは極めて稀です。大企業では数人休んでも何事もなく事業は回っていきますが、中小企業ではそうはいきません。余剰人員がいないのは当たり前で、営業兼企画、経理兼人事兼総務、など色々な仕事を同時に行っているのが一般的です。
またAI やIoT等へのシステム投資も中小企業では遅れており、人がいないと事業が回りません。ですので1 人辞めるだけでM&Aで想定していた相乗効果が出なくなってしまうなんてこともあります。経験ノウハウを豊富に持っている従業員なしで一緒に成長することは不可能であり、逆に辞めないようにどうするかを一緒に考えて欲しいといわれることが大半です。
4.会社を譲渡することは恥ずかしいこと?
→これも「身売り」という言葉から連想される質問で、20年前はそう見られていたこともありますが、今では、経営者仲間から『自分の代で廃業させずに、買ってもらえる会社までよく育てたね』『経営者の鏡だね』と称賛されるそうです。経営者としては、恥ずかしいのではなく『栄誉』です。
会社が存続していれば、従業員があり、その家族があり、お客様があり、さらには地域社会への貢献があります。自社が存続し続けること、それ自体が、大きな社会価値となります。
中小企業経営者の皆様には、3年後、5年後の自社と自分自身の姿を思い描く際に、ぜひM&Aについての正しい知識をもち、最初の一歩として、専門家に相談してみることをおすすめします。
ブルーレポートの発行者
株式会社フォーバル ブルーレポート制作チーム
フォーバルは1980年に創業以来、一貫して中小企業と向かい合い、現在20,000社以上にサービスを提供している。フォーバル創業者の大久保秀夫は東京商工会議所副会頭、中小企業委員会委員長としても活動。今後フォーバルが誰よりも中小企業のことを知っている存在を目指し、良いことも悪いことも含め、現場で中小企業の生の声を集め、実態を把握。そのうえで関係各所へ提言することを目的に、プロジェクトを発足。