ここで、興味深い調査結果との比較を行ってみることにする。
以下の調査は、株式会社商工組合中央金庫による「働き方改革」に関する調査(※21)である。
この中で、働き方改革に関する各取り組み・制度の実施状況を問う質問があり、選択肢にフォーバルで設定した4つの人材に関連する項目(これらの人材に関わる支援制度などの取組みがあるか)がある。
※21:「中小企業の『働き方改革』に関する調査」(株式会社商工組合中央金庫調査部、2017年1月)
https://www.shokochukin.co.jp/report/tokubetsu/pdf/cb17other04_01.pdf
まずは「子育て中の女性」について。
上記の調査結果には「2子育て世代の支援」「5妊娠・出産期の女性支援」の項目がある。「2子育て世代の支援」をしている企業は50.5%、「5妊娠・出産期の女性支援」をしている企業は42.8%という結果が出ている。フォーバル調査では、「子育て中の女性」の将来的な雇用意思は44%であり、これらの数字と近い結果になっているが、現状(現在雇用しているか)の結果は346社(1075社中・32.2%)であった。
ここからわかることは、企業として女性の子育てを応援し、雇用も検討する姿勢は示されているものの、現状はまだ積極的な雇用までは至っていないというものである。今後は女性の雇用についてもう少し踏み込んだ検討をしてもよいといえるかもしれない。
同様の結果は、ほかの人材にも表れている。
商工組合中央金庫の調査では、「1シニア層の活用」は61.6%と高かった。フォーバル調査では「(シルバー世代の)将来的な雇用意思」は30%と、商工組合中央金庫の調査と比べると低い結果になったが、現在雇用している割合(18%)と比べるとそれでも高くなっている。現在安倍政権はさらなるシルバー人材の活用に向けた議論を進めていくと予想される中、いかに今後の活躍の場を整備するかも重要になってくるだろう。
「家族などを介護している人」については、両調査とも低い結果であった。
フォーバル調査では「家族などを介護している人」を現状雇用している企業が12.0%、将来的な雇用意思は23.1% という結果であった。一方、商工組合中央金庫の調査の選択肢には「7介護離職の防止」があり、33.0%であった。介護離職の防止を考える企業が3 社に1 社という状況は、昨今の人材不足状況における企業側の本音でもあるといえよう。
国も介護離職の防止に力を入れると言っているが、一方で自宅での介護を推奨する姿勢は崩していない。これらの調査結果の数字からは、実際に介護によって働けなくなる労働者については厳しい見解を持っている経営者が多いことがうかがえる。
今後、少子高齢化がさらに進み、また団塊世代の更なる高齢化時代を迎える中、家族などを介護する人が増えることが予想される。すべての業種に当てはめることはできないものの、テレワークやフレックスタイムの導入など、ICT技術や雇用制度の活用によって解決できる問題もあると思われる。職場や労働者それぞれの環境に即した対応を検討する必要があるだろう。
このように、人手不足状況の解決策のひとつとして注目されているこれらの人材の雇用については、企業側にも検討しなければならない課題があるのも事実である。
ブルーレポートの発行者
株式会社フォーバル ブルーレポート制作チーム
フォーバルは1980年に創業以来、一貫して中小企業と向かい合い、現在20,000社以上にサービスを提供している。フォーバル創業者の大久保秀夫は東京商工会議所副会頭、中小企業委員会委員長としても活動。今後フォーバルが誰よりも中小企業のことを知っている存在を目指し、良いことも悪いことも含め、現場で中小企業の生の声を集め、実態を把握。そのうえで関係各所へ提言することを目的に、プロジェクトを発足。