人手不足の深刻度

人手不足の深刻度

フォーバル調査では人手不足状況について聞く際に、同時にその深刻度についても聞いている。

人手不足と回答した516社のうち、最も多かったのは「まだ乗り切れる程度」の277社(53.7%)であった。

そして「かなり深刻」と回答した44社、「深刻」と回答した127社の合計は171社、これは人手不足と回答した企業の33.1%を占めている。人手が「足りている」と回答した559社も合わせた全1075社の中での割合を見ると、約15.9%の企業が深刻な人手不足状況であると回答している。

同様の調査が、独立行政法人中小企業基盤整備機構により実施されている。
同機構が2017年3月に実施した調査(※8)によると、73.7%の企業が人手不足であると回答し、その企業に対して深刻度を聞いた結果が以下である。

「かなり深刻」と「深刻」の合計が52.8%となり、「人手不足を感じていない」と回答した企業を合わせた総数における割合も38.9%。人手不足が深刻だと回答した企業の割合はフォーバル調査よりも高い結果となっている。

「人手不足に関する中小企業への影響と対応状況」(独立行政法人中小企業基盤整備機構、2017年3月)
http://www.smrj.go.jp/doc/org/20170508_info01.pdf

これらの数字自体だけで見れば緊迫度は低いといえるかもしれないが、「まだ乗り切れる程度」(中小機構調査では「何とかやっていける程度」)と回答した企業についても、今後の生産人口の減少傾向を踏まえると、人手不足状況を決して楽観視することはできないだろう。

またフォーバル調査で「労働力が足りていない」と答えた企業(516社)のうち、業種別で上位15業界をピックアップし、その人手不足の深刻度を検証した。

「かなり深刻」と「深刻」を足した割合が高い順に、「運輸・倉庫」、「修理・メンテナンス」、「建設・工事」、「サービス」、「士業」と続く。特に「運輸・倉庫」は62.5%と、その深刻度が他業種と比べて際立って高くなっている。

中小機構が行った同様の調査でも、「かなり深刻」と「深刻」を合わせた数字が最も高くなっているのが「運輸業」であった(68.2%)。このように、業種により人手不足の深刻度は違いがあることがわかる。

「運輸・倉庫」業がここまで人手不足状況が深刻な背景には、近年のEC 市場の活性化による物流量の増加が進む一方で、就労者の高齢化や就労者数自体の減少傾向が続いていること、さらには長時間労働や座り続ける運転スタイルなどによる健康への影響など、就業への懸念が持たれている可能性はある。

EC 市場は今後も拡大し続けると予想される。こうした産業構造の変化への対応が間に合わないほど、今の時代は変化のスピードが速いといえるのかもしれない。

ブルーレポートの発行者

株式会社フォーバル ブルーレポート制作チーム

フォーバルは1980年に創業以来、一貫して中小企業と向かい合い、現在20,000社以上にサービスを提供している。フォーバル創業者の大久保秀夫は東京商工会議所副会頭、中小企業委員会委員長としても活動。今後フォーバルが誰よりも中小企業のことを知っている存在を目指し、良いことも悪いことも含め、現場で中小企業の生の声を集め、実態を把握。そのうえで関係各所へ提言することを目的に、プロジェクトを発足。

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