人手不足状況について

人手不足状況について

労働市場における人手不足が叫ばれるようになって数年が経つが、実態はどうなっているのか。まずは有効求人倍率や完全失業率から、昨今の雇用状況について見ることにする。

厚生労働省の有効求人倍率に係る調査では、リーマンショック後の2009年を底に求人倍率は上昇を続け、最新のデータで1.63倍となった(2019 年1 月)。有効求人数に対し、有効求職者数が下回る状態は2013年から続き、その差は拡大傾向にある(※1)。


※1:「一般職業紹介状況(平成30年12月分及び平成30年分)について」(厚生労働省、平成31年2月1日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000192005_00001.html

また失業率の推移を見ても、2002 年前後、また2009 年前後をピークに、その数字は下がり続けている。昨今の雇用情勢は売り手市場が続き、求職者にとってはおおむね良好に推移しているといえるだろう。

しかしそれは、企業側から見れば、労働力が集まりにくい状況が続いていることにもなる。

以下の図1−3は中小企業の従業員の過不足状況DIの推移である(※2)。2009年をピークにマイナス傾向が続いている。これは「過剰」より「不足」と答えた企業の割合が増加傾向であることを示している。全産業の数値を見ると、2011年頃からマイナスとなっており、人手不足状況が現在に至るまで続き、特に建設業とサービス業ではその傾向が強いことがわかる。

※2:「中小企業白書2018年版」(中小企業庁)
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H30/h30/index.html

また、企業側からの労働力不足を示す「欠員率」の推移を示したグラフがある。欠員数(未充足求人)とは事業所における欠員であり、仕事があるにもかかわらず、その仕事に、従事する人がいない状態を補充するために行っている求人のことである。これを見ると、2009年を底値に上がり続け、2017年の段階で2.4%、実に121 万人が欠員していることになる。2000年代と比べてもその増加の勢いは急激な増加の様相を見せている。

背景として考えられることのひとつは、日本の人口構成に基づく構造的な課題である。

日本の人口は2004年の1億2779万人をピークに下がり続けており、いよいよ人口減少社会に突入した。また第二次世界大戦後のベビーブーム世代である、いわゆる団塊世代が65歳を過ぎ、大量離職の時代を迎えていることも重なり、生産人口の減少が始まったことが大きな要因であろう。

次のグラフは、人口全体に占める生産年齢人口(15 ~ 64 歳)の割合を示したものである。今後も14 歳以下の人口は減り続け、逆に65 歳以上の高齢人口は増加し続けている。そして人口は2004 年をピークに下降し続け、生産人口の割合は減少し続けている。2018 年現在で、この傾向はすでに始まっていることがわかる。

さらに、以下の調査は、帝国データバンクが毎年行っている人手不足に関する調査結果である(※3)。

これを見ると、2009年を底に人手不足感は上昇を続け、2017年には4割台に、2018年には5割を超えた。ここ数年は高い数値で維持している。

※3:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査」(2018年10月)
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p180806.pdf

人手不足が指摘されるようになって久しいが、ここにきてより一層その深刻度が増していることがこのグラフからも読み取れる。近年は好調に推移していた景気に水を差しかねない事態に陥る可能性もあることから、当面はこの人手不足状況の推移に留意しておく必要があるだろう。

ブルーレポートの発行者

株式会社フォーバル ブルーレポート制作チーム

フォーバルは1980年に創業以来、一貫して中小企業と向かい合い、現在20,000社以上にサービスを提供している。フォーバル創業者の大久保秀夫は東京商工会議所副会頭、中小企業委員会委員長としても活動。今後フォーバルが誰よりも中小企業のことを知っている存在を目指し、良いことも悪いことも含め、現場で中小企業の生の声を集め、実態を把握。そのうえで関係各所へ提言することを目的に、プロジェクトを発足。