企業の生産性向上に欠かせないのは、あらゆる経営資源の見える化をし、問題点を洗い出し、その解決策を見出し、実行することである。特に財務環境の分析は重要である。財務管理を本来の適切なかたちに整えるだけで黒字転換できるような企業は多い。
フォーバル調査では、第2回において「月次決算F(※9)」に関する質問をした。まずは、そのメリットについての認知度を確認した。
「知っている」と回答したのは1105 社(1511 社中)、実に73%の経営者が、「月次決算F」のメリットを把握していた。財務管理の重要性について多くの経営者が問題意識を持っていることがわかる。
※9:フォーバル版月次決算のこと。フォーバル版月次決算とは、経営状況をリアルタイムに把握することを目的としてフォーバルが独自に推奨している取り組みで、翌月5日までに当月の売上、原価、販売管理費の数値集計を行うもの。ただし、年次決算とは違い法律の要請に基づいて実施するものではない。
本レポートでは、フォーバル版月次決算のことを「月次決算F」と表記することにする。
では実際に「月次決算F」を行っているかどうかを問う設問では、「している」と回答したのは904社(同)、全体の59.8%であった。認知を問う設問からスコアを下げていることから、必要性を認知していても、実際に実行していない企業があることがわかる。
財務の状況をきちんと把握するためにも、このスコアはさらに上げていく必要があるだろう。
ここで、「月次決算F」の作成を「している」と回答した企業に対し、メリットをどこに感じるかを問う設問では、「タイムリーに損益の確認ができる」が最大の576社(901社中・64.0%)となった。
次いで「スピーディーに経営判断ができる」の207社(同・23.0%)、「年次決算の際の手間が減る」の86社(同・9.5%)という結果であった。
一方、「月次決算F」を「していない」と回答した経営者に対しては、その理由を聞いた(複数回答)。
最も多かったのは「取り組む時間がない」の248 社(607 社中・40.2%)。それを行う時間的余裕がない企業が多いことがわかった。
また、次いで多かった「取り組む人員がいない」が161 社(同・26.5%)であった。時間や人の不足から対応できないという回答が上位にきている。
その他、「面倒くさい」129社(同・21.3%)、「メリットが感じられないので取り組むつもりはない」124社(同・20.4%)が続いていることから、「月次決算F」をすることについて好意的に考えていない経営者も一定数いることがわかった。
ここで、「月次決算F」をしている企業としていない企業での景況比較を行ってみた。
これをみると、作成している企業の方が、「売上」「資金繰り」「採算(経常利益)」「従業員数」すべてにおいて前年同期と比較して増加傾向にある割合が高いことがわかった。
また、「月次決算のメリットを知っている」が、「作成はしていない」と答えた企業は299社あった。その理由を分解してみたところ、「時間がない」「人員がいない」のスコアが高かった。
また「その他」として書かれた自由回答欄には、「おおまかに把握しているから」や、「なんとなくわかる」といった、経営者の勘や感覚に頼った管理をしている企業もみられた。
ブルーレポートの発行者
株式会社フォーバル ブルーレポート制作チーム
フォーバルは1980年に創業以来、一貫して中小企業と向かい合い、現在20,000社以上にサービスを提供している。フォーバル創業者の大久保秀夫は東京商工会議所副会頭、中小企業委員会委員長としても活動。今後フォーバルが誰よりも中小企業のことを知っている存在を目指し、良いことも悪いことも含め、現場で中小企業の生の声を集め、実態を把握。そのうえで関係各所へ提言することを目的に、プロジェクトを発足。