社員の時間の使い方を把握しているか

中小企業が生産性の向上に取り組むときには、どんなことが課題になるのか。

フォーバルではこれまで多くの中小企業向け支援を行ってきた。その経験から、中小企業が直面する人手不足状況、そして今後の推進が見込まれる働き方改革への取り組みによる厳しい労働時間規制の拡大をにらんだとき、これまで以上の時間効率の向上が必要になると考えている。

限られた人員と時間でこれまで以上の成果を上げるためには、いかに効率よく仕事に取り組むかが競争力を強化する上で不可欠なためである。

その時間効率について考える際、まず取り組まなければならないのが現状把握、すなわち社員の労働時間の把握についてである。

フォーバル調査では、「社員一人ひとりの、1 日の時間の使い方を把握されていますか?」という質問に対し、「している」と回答した企業は764 社にのぼった(1188 社中・64.3%)。おおよそ3社に2社は、各社員の時間の使い方について把握していると回答している。

また、「している」と回答した企業(764 社)に対し、「主にどのように把握されていますか?」

と問う質問においては、最も多かった回答が「紙ベース(シフト表やスケジュール表等)」の212社であった(764社中・27.7%)。

次いで多かったのは「簡易的なシステム(WEB カレンダー/ google カレンダー等)」が174社(同・22.8%)であり、「紙ベース」と並んでスコアが高かった。

その他、「ホワイトボード」「PC内(エクセル等)」「メールで予定を事前にもらっている」と続くが、勤怠管理に特化したシステム「専用のシステム(SFA(※3)など行動管理システム)」は53社(同・6.9%)と低い結果になった。

この結果からうかがえることとして、「紙ベース」や「ホワイトボード」など、旧来型の管理手法が多く用いられていることがわかる。

また「簡易的なシステム」や「PC(エクセル等)」など、比較的簡単に導入・操作が可能なスケジュール管理のツールをPCやデータで行う企業も多くなっている。

一方で、勤怠管理を専用とするツールの利用率は今のところ導入が進んでいるとはいえない状況である。

※3:SFA(Sales Force Automation)営業活動の効率化に向け、顧客情報やスケジュール管理など営業活動に関する情報を管理するツール。

ここで他の調査結果を参照してみる。

民間調査会社による「残業時間に関するアンケート調査(※4)」では、勤怠管理の手法について中小企業で最も多かったのが「タイムカード」の38.8%であった。続けて多かったのが「紙(タイムカード以外)」の27.5%、「Web システム(パソコンやスマートフォンでの出退勤管理)」が25.6%と、この3つで91.9%を占めていた。選択肢にある「IDカード」を使用しているとの回答は3.8%に限られている。

フォーバル調査では選択肢にタイムカードがなかったため単純比較はできないものの、現状はタイムカードや紙ベースでの記録が多いことがわかる。

「残業時間に関するアンケート調査」(株式会社アスマーク、2016年10月)
https://www.asmarq.co.jp/examine/2810overtimework.html

手書きで入力された記録を管理者がエクセルに入力している会社もあるだろう。それを一度の入力で管理することができれば二度手間を省くことができ、工数を減らせる可能性がある。

また出勤・退勤時は必ず営業所に立ち寄らなければならなかった営業マンも、営業先から勤怠入力をすることで直行直帰を可能にし、その間に新しい案件に対応できるかもしれない。

人手を介する入力や管理手法を少しでも減らしていくことで、人手不足に対応するだけでなく業務の効率化につなげていくことができる、今後はそうした意識を持つことが必要になるだろう。

ブルーレポートの発行者

株式会社フォーバル ブルーレポート制作チーム

フォーバルは1980年に創業以来、一貫して中小企業と向かい合い、現在20,000社以上にサービスを提供している。フォーバル創業者の大久保秀夫は東京商工会議所副会頭、中小企業委員会委員長としても活動。今後フォーバルが誰よりも中小企業のことを知っている存在を目指し、良いことも悪いことも含め、現場で中小企業の生の声を集め、実態を把握。そのうえで関係各所へ提言することを目的に、プロジェクトを発足。