フォーバルでは5回にわたるアンケート調査の多くの設問で、労働生産性に関連する質問を行った。少子高齢化と人口減少、生産人口も減少していく社会において、いかに生産性を高めていくかが重要であると考えているためである。
本題に入る前に、生産性について考えてみたい。企業は何かを作ったり生み出したりする際に、それに必要なヒト、モノ、カネ、時間などの要素を投入することになる。生産性を見ることは、すなわち生み出した成果に対し、どの程度の生産要素がかかったのか、その程度をみていく作業になる。
例えば「資本生産性」の場合、成果に対してどの程度の資本が投入されたか(成果/資本)で割り出す。
また「労働生産性」の場合は成果に対してどの程度の労働力が使われたか(成果/労働)により計算する。
また「労働生産性」にも「物的労働生産性」「付加価値労働生産性」の2種類があり、前者は生産量や販売金額などを、後者は付加価値額(「売上高―売上原価」などで計算する)を対象としている。
この他、「全要素生産性」(TFP=Total Factor Productivity)という考え方もある。
これは労働や資本など、成果に対して投入したものに技術革新、規制緩和、ブランドの価値などあらゆる要素を加味するもの。技術進歩や時間当たりの労働効率の向上などにより、結果として出される割合は高くなると考えられている(※1)。
このように、生産性を検証する際には複数の手法、考え方がある。
調査結果の検証に入る前に、では日本は他国と比較したとき、労働生産性はどの程度なのかをみてみることにする。
国別の労働生産性の計算は、就業者1人あたり(あるいは就業1時間あたり)の成果を導くことで計算されることが多い。例えば、国内総生産(GDP)を就業者数で割るか、あるいは就業1時間あたり(就業者数×労働時間)で割るかにより算出する。
上記は公益財団法人日本生産性本部が発表した、国別の労働生産性について比較したグラフである(※2)。GDPを就業者数で割って、一人当たりの労働生産性を計算したものが上記の図であり、またそれを国際比較したものである(2017年、OECD加盟国の36か国比較)。
日本は84027ドルで21位、OECD平均の95464ドルを下回っている。この結果を見ると、日本は必ずしも労働生産性が高いとはいえない状況にある。
さまざまな効率化を進めながら、生産性を上げていかなければならないのはどの国も同じであるが、日本が状況的に厳しいのは前例のないほどの高齢化率の進捗があり、それに伴う内需縮小や労働人口減少が進み、経済成長が鈍るリスクがあるためである。
より高いアウトプットを人員増や業務量の削減だけで対応するというのは現実的ではない。一方、成果に対して、労働者数が減ればそれだけ一人あたり、あるいは時間あたりの成果が大きくなる。
例えば、労働者のスキルアップが進むことや、業務の棚卸等によりムダな業務が削減されるなどすれば一人当たりの成果が増え、その結果労働生産性が上がったといえることになる。
いかに生産性を向上させるか。中小企業にとっても待ったなしの課題であるといえる。
※2:「労働生産性の国際比較」(公益財団法人日本生産性本部)
https://www.jpc-net.jp/intl_comparison/
ブルーレポートの発行者
株式会社フォーバル ブルーレポート制作チーム
フォーバルは1980年に創業以来、一貫して中小企業と向かい合い、現在20,000社以上にサービスを提供している。フォーバル創業者の大久保秀夫は東京商工会議所副会頭、中小企業委員会委員長としても活動。今後フォーバルが誰よりも中小企業のことを知っている存在を目指し、良いことも悪いことも含め、現場で中小企業の生の声を集め、実態を把握。そのうえで関係各所へ提言することを目的に、プロジェクトを発足。